アルバイトが辞めない店舗にするには？

コロナ禍以降、多くの企業が人手不足に悩んでいます。特に飲食店では、非正社員の人手不足割合が76.3％を記録。深刻な人手不足に悩まされていると言っても過言ではありません。

そんな状況下にある飲食店にとって、アルバイト（法律上は「パートタイム労働者」と言い、本コラムでは「パート」も含めて「アルバイト」と表します）は、とても貴重な人材です。そこで今回は、アルバイトが生き生きと働ける店舗作りのポイントをご紹介します。

出典：人手不足に対する企業の動向調査（2022 年 10 月）｜株式会社帝国データバンク

1．アルバイトスタッフが辞める理由って？
　1-1.人間関係への不満
　 1-2.卒業・進学・就職のため
　 1-3.条件への不満
2．アルバイトスタッフが辞めない店舗にするポイント
　 2-1.正直に話して納得してもらってから雇用する
　 2-2.最初にお店のルールや業務の流れを説明しよう
　 2-3.歓迎ムードも大切
　 2-4.積極的にコミュニケーションをとろう
まとめ

1アルバイトスタッフが辞める理由って？

アルバイトを辞める理由は一概には言えません。しかし、2021年に行われた、アルバイトを辞めた経験がある男女500人を対象としたアンケート調査によると、職場の人間関係や、卒業・進学・就職のためにアルバイトを辞めたという人が多いようです。

最初に、アルバイトスタッフが辞めてしまう理由をひとつずつ見てみましょう。

出典：【アルバイトを辞めた理由ランキング】男女500人アンケート調査｜株式会社ビズヒッツ

1-1.人間関係への不満

前述の調査では、500人のうち125人が「人間関係が悪い」ことを理由に退職したと答えています。中には店長や社員から嫌がらせを受けたり、ハラスメントを受けたりした、という人も。

ちなみに一口にハラスメントと言っても、パワーハラスメント（通称：パワハラ）やセクシュアルハラスメント（通称：セクハラ）、妊娠・出産・育児休業等ハラスメントなど、さまざまな定義があります。

特にセクシュアルハラスメントには、異性に対する性的な言動はもちろん、同性に対する性的な言動も該当します。

性的指向（その人の恋愛・性愛がどの対象に向かうかを示すこと）や性自認（その人が自分で認識している性別のこと）に関わらず、性的なうわさを流したり、からかったり、不必要に身体に触れたりしてはいけません。自らの言動に注意するとともに、他の従業員の言動にも気を配ることが大切です。

出典：ハラスメントの定義｜厚生労働省

1-2.卒業・進学・就職のため

同じ調査では、「卒業・進学・就職のため」にアルバイトを辞めたと答えた人も500人中72人いました。学生の場合「受験勉強に専念したい」「大学の授業が忙しくなった」などの理由でアルバイトを辞める人も少なくないようです。

また、学生から社会人になったり、正社員として就職してアルバイトを辞める人、進学を機に引っ越しをし、通学経路が変わったために退職したという人もいました。

1-3.条件への不満

「勤務時間・日数」「時給・収入」などの条件に不満があり退職した人もいます。思ったより「シフトに入れてもらえない」ために辞めた人が多く、中には時給が「最低賃金以下」だったと言う人もいました。

もしアルバイトの時給を最低賃金以下にしていた場合、最低賃金法第4条に違反したとみなされ、同法第40条に基づき50万円以下の罰金が課されます。経営者として決してしてはいけない行為です。

なお、最低賃金には地域別最低賃金・特定最低賃金の2種類があります。前者は産業や職種に関わらず、都道府県内の事業所で働くすべての労働者に適用される最低賃金を指します。一方、後者は特定の産業に設定されている最低賃金です。

そして地域別最低賃金については、全国的な整合性を図るため、毎年、中央最低賃金審議会から地方最低賃金審議会に引き上げ額の目安が提示され、地方最低賃金審議会において審議が行われています。

ちなみに2023年6月現在、東京都の最低賃金は1072円です。が、昨今の物価高の影響を受けて引き上げられる見込みです。知らず知らずのうちに、アルバイトの時給が最低賃金以下になっていたことがないように、最新の動向をチェックしておきましょう。

出典：最低賃金法｜e-Gov法令検索
出典：最低賃金の種類｜厚生労働省
出典：最低賃金の決め方は？｜厚生労働省
出典：必ずチェック最低賃金｜厚生労働省

2アルバイトスタッフが辞めない店舗にするポイント

さて、アルバイトスタッフが辞めてしまう理由が分かったところで、アルバイトスタッフが辞めない店舗にするポイントをみていきましょう。

2-1.正直に話して納得してもらってから雇用する

後々「こんなハズじゃなかった……」とミスマッチが起こらないよう、面接の段階で、例えば以下のようなことを明確に伝えることが大切です。

お店の特長、雰囲気、一緒に働く従業員のこと
シフトは週〇回以上
最初の3か月間は時給〇〇円、以降は時給〇〇円
1年以上続けるとバイトリーダーに昇格できる
バイトリーダー昇格後は時給〇〇円にアップ

など

とにかくアルバイトを採用したいからといって、最低のシフト日数を少なく伝えたり、昇給を検討してないのに曖昧な言葉で濁すと、不信感を抱かれ、早い段階で退職してしまうことになりかねません。

採用前に、しっかりとお店側の要望を伝え、納得してもらうことが大切です。そして、実際に雇ってから、経営者側がその条件を遵守することが何より大切になります。

2-2.最初にお店のルールや業務の流れを説明しよう

お店のルールは早めに共有しましょう。身だしなみや声かけ、休憩室の使い方に至るまで、新人アルバイトにとっては分からないことだらけです。緊張で訊ねることを躊躇してしまう人もいますから、優しく歩み寄ってあげることが大切です。

また、業務を教えるときは、その都度「こうして」「ああして」と伝えるだけでなく、「午前は〇〇をして、午後は〇〇をしよう」といったように、1日の流れを伝えることも大切です。業務の流れが把握できれば、不安が少なくなり、自分で考えて動きやすくなるでしょう。

2-3.歓迎ムードも大切

歓迎ムードで迎え入れることも大切です。歓迎会を実施するなど、先輩や同僚と打ち解けるきっかけが作れるとよりよいでしょう。最初のうちは、責任者から他の従業員に対して「新しく入った〇〇さんです」と紹介してあげることも忘れないようにしましょう。

誰でもきっと「歓迎されている」と感じれば、打ち解けるのも早くなるはずです。先輩スタッフへの質問などもしやすくなり、業務も円滑に進みやすくなりますから、溶け込みやすい職場だな…と思ってもらうことも肝心です。

2-4.積極的にコミュニケーションをとろう

人間関係を円滑にする工夫として、「おはよう」「お疲れさま」「ありがとう」などの、コミュニケーションの核となる言葉は積極的に発していきましょう。

また、アルバイトがミスをしたときは「怒り」をぶつけるのではなく「叱る」ことを意識しましょう。何をどうしたらうまくいくのかを、具体的な行動例とともに伝えてあげることが大切です。

こうしたときに、ミスと関係ない、相手を傷つける言葉を言うのはやめましょう。例えば、「そんなこともできないの？」といった言葉を使うことは、パワーハラスメントの6類型のうち「精神的な攻撃」に当たる可能性があります。

出典：パワーハラスメントの定義について｜厚生労働省

まとめ

アルバイトを募集し、採用のための面接をするには、多くの費用と時間がかかります。そういった事情からも、経営者としては、せっかく雇ったアルバイトがすぐに辞めてしまう事態は防ぎたいものです。

働き始めたばかりのアルバイトスタッフは、ちょっとしたことでつまずくこともあります。そんなとき、あたたかく歓迎してくれて、積極的に声をかけてくれる店長や先輩、同僚がいれば「もうちょっと頑張ろう」と前向きになってくれるかもしれません。このコラムを参考に、アルバイトが辞めない店舗を目指してみてください。

2023年8月

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