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改正された電子帳簿保存法への対応をわかりやすく解説|2024年から義務化される内容は?
2022年に改正された電子帳簿保存法。2023年までは経過期間として宥恕(ゆうじょ)措置が取られていましたが、2024年からはすべての事業者に対して電子取引が義務化されます。では、個人店のオーナーなどの小規模事業者は、どのような対応を行えばよいのでしょうか?
ここでは、2024年から義務化される電子取引を中心に、領収書などの対象書類の種類や、タイムスタンプの要件などの対応をわかりやすく解説します。さらに、電子データの保存期間や売上高1,000万円以下の事業者の対応、違反時の罰則についても説明します。
- 1.電子帳簿保存法とその改正内容とは?
1-1.税務関係帳簿書類のデータ保存に関する法律
1-2.改正により2024年から電子取引のデータ保存が原則義務化 - 2.2024年から義務化される対応は?
2-1.電子取引:証憑書類を電子データのまま保存することが義務となる
2-2.電子取引はタイムスタンプの付与が必要
2-3.帳簿類や紙でやりとりした書類のデータ化は任意だがメリットあり - 3.電子帳簿保存法に関するQ&A
3-1.電子帳簿保存法における保存期間は?
3-2.紙で受け取った書類もデータ化する必要がある?
3-3.電子データは検索できるように保存しないといけない?
3-4.電子帳簿保存法に違反すると罰則はある? - まとめ
目次
1電子帳簿保存法とその改正内容とは?
1-1.税務関係帳簿書類のデータ保存に関する法律
電子帳簿保存法とは、税務関係帳簿書類のデータ保存に関するルールを定めた法律で、1998年7月に施行されました。
これは、それまで書面で保存することが義務づけられていた「所得税法、法人税法、消費税法」に関する帳簿書類を、電子データとして保存できるようにすることを目的とした法律で、その主な理由としては、納税者が帳簿書類を保存する負担を軽減することにあります。
1-2.改正により2024年から電子取引のデータ保存が原則義務化
電子帳簿保存法は2022年に改正され、電子取引における電子データ保存が「義務規定」として義務づけられました。2024年1月からは、電子データで受け取った見積書や請求書、領収書などの証憑書類を電子データのまま保存する必要があります。
2023年12月末までは移行期間として「宥恕(ゆうじょ)措置」が取られており、従来どおり紙での保存が容認されていました。しかし、2024年1月からは原則としてすべての事業者を対象に義務化されます。
22024年から義務化される対応は?
電子帳簿保存法には、「電子取引」「電子帳簿保存」「スキャナ保存」の3つの区分があります。このうち「電子取引」が義務となり、残りの2つは任意です。詳しく説明します。
2-1.電子取引:証憑書類を電子データのまま保存することが義務となる
電子帳簿保存法の改正により、電子データとしてやりとりした証憑(しょうひょう)書類は、電子データのまま保存することが義務づけられました。(電子取引)
証憑書類とは、請求書や領収書、見積書、納品書、注文書といった書類のことです。例えば、取引先からメールやクラウドサービスを利用して送られてきたPDF形式の請求書や納品書などが該当します。
今まで紙に印刷して保存していたオーナーも多いことと思いますが、2024年からは原則、電子データで受け取った証憑書類は電子データのまま保存する必要があるとおぼえましょう。
2-2.電子取引はタイムスタンプの付与が必要
そして、これら電子データで受け取った証憑書類には、改ざんを防ぎ真実性を担保する「タイムスタンプ」を付与する必要があります。付与には期限があり、概ね7営業日以内、最長でも2ヶ月程度で受け取った側が付与します。
タイムスタンプは、電子データが存在していた日時を証明するために、日付と時刻を記録する仕組みのことです。付与には、時刻認証局(TSA)からハッシュ値を取得する必要がありますが、付与のためには民間事業者が提供するシステム・サービスの利用が一般的となるはずです。
ただし、証憑書類の発行者がタイムスタンプを付与している場合や、データの改ざんができないシステムやサービス(電子帳簿保存法に対応している経費精算システム・サービスなど)を利用している場合は、タイムスタンプの付与は免除されます。
出典:タイムスタンプについて|総務省
2-3.帳簿類や紙でやりとりした書類のデータ化は任意だがメリットあり
電子帳簿保存法の残りの2つの区分、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」への対応は任意です。しかし、対応することでのメリットがあるためここで説明します。
電子帳簿等保存
「電子帳簿等保存」とは、パソコンなどを使って会計システム・サービスなどで作成した国政関係帳簿や国税関係書類や、自己が作成して電子データとしてやりとりした証憑書類(請求書や領収書など)の控えを電子データのまま保存することをいいます。
スキャナ保存
「スキャナ保存」とは、自己が作成し紙の状態でやりとりした証憑書類(請求書や領収書など)の控えや、紙の状態で受け取った証憑書類(請求書や領収書など)をスキャンし、タイムスタンプを付与した上で電子データ化し保存することをいいます。
2つのメリット
「電子帳簿等保存」を行うと「優良な電子帳簿」の要件を満たす可能性があります。
「優良な電子帳簿」の要件を満たした場合のひとつめのメリットは過少申告加算税の軽減措置です。過少申告加算税とは、確定申告時に申告納税額が少なかった場合に課せられる加算税のことで、本来払うべき税金額に10~15%加算されます。しかし、優良な電子帳簿の要件を満たした事業者は、これが5%に軽減されます。
2つめのメリットは、青色申告特別控除額の優遇です。これは青色申告をしている個人事業主に限りますが、優良な電子帳簿の要件を満たしている場合、控除額が通常の55万円から65万円になります。
なお、「スキャナ保存」を行うことでのメリットは、ペーパーレス化による省スペース化や業務効率化となり、これは電子帳簿保存法全体のメリットともいえるでしょう。
3電子帳簿保存法に関するQ&A
3-1.電子帳簿保存法における保存期間は?
電子帳簿保存法では、法人と個人事業主で定められている文書の保存期間が異なります。
個人事業主の場合は、5年もしくは7年です。ここでは、個人店オーナーのほとんどを占めるであろう青色申告者について説明します。
帳簿類や決算書類、領収書などは原則7年の保存が必要です。一方、請求書や見積書、契約書については5年の保存となります。詳しくは、国税庁のHPが参考になります。
法人の場合の保存期間は7年ですが、欠損金の繰越控除を受ける場合は10年です。なお起算点は「事業年度における確定申告の提出期限の翌日」となります。
出典:記帳や帳簿等保存・青色申告
3-2.紙で受け取った書類もデータ化する必要がある?
紙で受け取った書類の電子データ化は任意です。そのため、無理にデータ化する必要はありません。
しかし、データ化を行うことで「優良な電子帳簿」の要件を満たす可能性があり、満たした場合は過少申告加算税の軽減や、青色申告特別控除額の優遇などのメリットがあります。
詳しくは、「2-3.帳簿類や紙でやりとりした書類のデータ化は任意だがメリットあり」をご覧ください。
3-3.電子データは検索できるように保存しないといけない?
電子帳簿保存法では、保存する電子データのファイル名に「取引年月日」「取引金額」「取引先名」を含める必要があります。
それ自体は難しいものではなく、例えば「20240101_㈱カシオ計算機_110000_見積書.pdf」といったファイル名にすることで要件を満たせます。ルール化して管理していく必要があるでしょう。
これは売上高が1,000万円を超える事業者に適用されるもので、それ以下の事業者には適用されませんが、税務職員に求められたときに当該のファイルを探してダウンロードできる状態にしておく必要があるので注意しましょう。
出典:電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)問15|国税局
3-4.電子帳簿保存法に違反すると罰則はある?
電子帳簿保存法の規則に違反し、かつ、それが悪質だった場合は、以下の罰則を受ける可能性があります。
- 1. 青色申告の承認を取り消される
- 2. 重加算税を課せられる
青色申告が取り消されると特別控除(最大65万円)が受けられなくなります。それにより、より多くの税金を納めることになります。また、隠ぺいや偽装などがあった場合は、申告漏れに生じる重加算税も課せられます。
一方、令和5年度税制改正の大網では、「相当の理由」があると税務署に認められた場合において、2024年以降も紙に出力しての保存が認められました。相当の理由に該当するケースは明らかになっていませんが、人手不足などで準備が間に合わないといったやむを得ない状況が該当するものと予測され、対応できる事業者が対応しなくてもよいわけではありません。
原則として電子データでの保存が必要となることは変わりませんので、すべての事業者は速やかに準備を進める必要があるといえるでしょう。
出典:令和5年度税制改正の大網(目次)|財務省
まとめ
電子帳簿保存法への対応は、少々難しく感じられるかも知れません。しかし、義務となったのは証憑書類を電子データのまま保存することのみで、実はそこまで難しいことではありません。
一方で、青色申告特別控除額の優遇などを受けるために、「優良な電子帳簿」の要件を満たそうとする場合は、手間が増えます。また、タイムスタンプは遅くても2ヶ月程度で付与しなくてはいけないため、半年に一度まとめて領収書を処理するといったこともできません。
電子帳簿保存法への対応の一つひとつは決して難しくありませんが、ルーティーン化しないと間違えたり処理が漏れたりする可能性は高くなります。ルールを定め、毎月確実にこなす体制づくりが大切になるでしょう。
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