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経営者が押さえておきたい労務の話|従業員とのトラブル防止のために

労務とは、労働に付随する関連業務全般を指すことばです。労務には、給与や社会保険に関わること、就業規則や福利厚生、人事、勤怠管理などが含まれます。会社を円滑に経営するとともに、従業員が安心して働ける環境をつくるために欠かせません。

会社を運営するために必要な労務関連の知識は多岐に渡り、経営者の方も十分に理解することは難しい場合があるでしょう。そこでここでは、従業員とのトラブルを防ぎ、円滑に会社運営を行うために押さえておきたい重要なポイントをご紹介します。

1採用・就業に関する労務

1-1.労働条件は必ず書面にする

使用者は、従業員と労働契約を行う際、労働条件を明示しなくてはなりません。その中でも、以下の12項目は書面での明示が求められます。

  • 労働契約の期間に関する事項
  • 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
  • 就業の場所及び従業すべき業務に関する事項
  • 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項
  • 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
  • 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
  • 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
  • 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  • 安全及び衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰及び制裁に関する事項
  • 休職に関する事項

さらに、退職金や賞与、安全衛生、懲戒などを就業規定で定めている場合、それらも併せて書面で明示します。これらは労働基準法により定められており、明示義務に違反した場合、30万円以下の罰金に課せられます。

参考:採用時に労働条件を明示しなければならないと聞きました。具体的には何を明示すればよいのでしょうか。|厚生労働省

1-2.試用期間後の本採用拒否は解雇に等しい

試用期間とは、本採用決定前に労働者の能力や勤務態度などを評価し、社員としてふさわしいかを確認する期間です。扱いとしては「解約権留保付き雇用契約」とされています。

この試用期間中に、あまりも社員として能力が不足していたり、勤務態度に問題があったりする場合は本採用を拒否できます。しかし、この本採用拒否は解雇と同じ性質があり簡単ではありません。

本採用を拒否するためには、解雇の際と同じく「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が求められます。つまり、第三者からみてもやむを得ないと感じられる理由でないと労働裁判などによって無効となるリスクがあるのです。「イマイチだな…」「期待したほどではなかった」といった理由での本採用拒否は原則できないことを理解しましょう。

なお、試用期間の長さについて特に定められてはいませんが、1年を超えるような期間を設定すると、民法90条により「公の秩序又は善良の風俗に反する」として無効となる恐れがあります。そのため、一般的に3~6ヶ月の範囲で定められます。

1-3.就業規則を整えよう

就業規則とは、労働者の賃金や労働時間、職場内での規律などを定めたもので、職場での規則集としての性質を持ちます。従業員が10人以上の職場では必ず作成しなくてはならず、10人未満であっても作成することが望ましいとされています。

就業規則には、以下の3つの項目が必ず必要です。

  • 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇に関する事項
  • 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  • 退職に関する事項

その他にも、退職手当やボーナスなど、定める場合は記載しなければならない事項がいくつかあります。

就業規則を作成するにあたっては、定める内容が法令や労働協約に反する内容になっていないかを慎重に確認しましょう。また、職場の実態に合ったものになっているか、内容がかわりやすいものになっているかといった観点でのチェックも必要です。

出典:就業規則作成の9つのポイント|厚生労働省

2休暇・残業に関する労務

2-1.従業員を残業させられる時間を知ろう

労働基準法第32条及び第40条には、原則として、1日8時間もしくは1週間に40時間を超えて労働させてはならないとありますが、労働基準法第36条の規定に沿って36協定(さぶろくきょうてい)を結ぶことで、時間外または休日に労働させることができるようになります。

しかし、36協定を結んだからといって、従業員を無限に残業させられるわけではありません。2019年より施行がはじまった働き方改革関連法により、時間外労働の上限は原則「月45時間、年360時間」と定められ、さらに月45時間を超えられるのは年6ヶ月までとなりました。

これらは「過労死」を防ぐために定められたものであり、違反した場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に課せられます。

2-2.年次有給休暇は年5日以上取得させなくてはならない

2019年から施行がはじまった働き方改革関連法により、「年10日以上有給休暇が付与されたすべての法人の従業員」は、10日以上の有給休暇が付与されてから1年以内に5日以上有給休暇を取得することが義務となりました。

これは、有給休暇を取得せずに働く従業員が多いことを鑑みた制度で、過労をなくして働きやすい社会をつくっていくためのものであり、正社員だけでなく契約社員やパートタイマーにも適用されます。

違反をした場合は、経営者に対して従業員1人あたり30万円以下の罰金が課せられ、違反した従業員が複数いる場合は人数分の罰金となることに注意が必要です。うっかり違反してしまうことがないよう計画的に有休を取得させましょう。

2-3.「管理職は残業代不要」は間違い

よくある勘違いに、「管理職の従業員には残業代を支払わなくてよい」というものがあります。実際には、法律上の「管理監督者」に当たらない管理職には残業代を支払う必要があります。

管理監督者とは、労働基準法第41条に定められている「監督若しくは管理の地位にある者」のことです。管理監督者と認められるには「労働時間や休日等の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容、責任と権限を有していること」や「賃金などについて、その地位にふさわしい待遇がされていること」などの要件があります。

管理職が管理監督者に当てはまるかは個別の判断が必要です。不安がある場合は弁護士などに相談しましょう。

出典:労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために|厚生労働省

3賃金・退職・解雇に関する労務

3-1.賃金を一方的に変更するのはNG

使用者が労働者の賃金を一方的に変更することはできません。労働契約法第8条と第9条により、労働者の同意がなければ労働条件を変更できないことが定められています。

同意があれば変更は可能ですが、賃金を下げる不利益変更については、労働者の「真に自由な意思」に基づいた同意が必要とされているため、丁寧な説明で労働者の納得を得る必要があります。

3-2.退職届けは拒否できない

従業員から退職届が提出されたものの、人員不足や後任がいないなどの理由で、できれば拒否したい…ということもあるかもしれません。しかし、退職届を拒否することはできません。

退職届は、会社の就業規則に則って1ヶ月ほど前に申し出ることが一般的ですが、民法上は退職届を出して2週間経過した時点で退職が可能です。これは、会社が退職届を受理しない場合も同様です。退職届が出された時点で、すみやかにそのあとの体制づくりを行いましょう。

3-3.経営者は従業員を解雇できるか

従業員の解雇は可能ですが、簡単ではありません。解雇には大きく「懲戒解雇」と「一般解雇」があるので、それぞれ解説します。

従業員が重大な違反や犯罪行為をし、就業規則に記載されている懲戒事由にあたる場合、もっとも重い制裁である「懲戒解雇」が適用できます。この場合は、解雇権の濫用に当たらないことを十分確認した上で、一方的な動労契約の解除が可能です。

一方で、一般解雇は法的に正当な理由が必要で、かつ「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の両方が必要で、抽象的な表現であり具体的な判断が難しくなっています。正当な理由とは、例えば以下のようなものです。

  • 上司の指示や就業規則に全く従わない
  • 重大な勤務成績不良・能力不足
  • 協調性がなくトラブルが絶えず会社に不利益を与えている
  • 遅刻・早退・無断欠勤が多く、反省もなく是正もしない

一般解雇は、裁判などの結果解雇が不当とされる事例が多いことも多くなっているため、弁護士に相談するなどしながら慎重に対応する必要があります。

4そのほかの労務

4-1.会社は原則として社会保険に加入する必要がある

労働者を1人でも雇用している会社は社会保険の加入対象になります。対象となる社会保険とは以下のようなものです。

【社会保険には5つの保険が含まれる】

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 雇用保険
  • 労災保険
  • 介護保険

社会保険に未加入の状態が発覚すると、過去2年分を遡って徴収された上で強制加入となるほか、悪質と認められた場合は6ヶ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が課されます。

なお、法人でなく個人事業主として事業をしている場合で、農業、林業、漁業、サービス業、神社などの場合は社会保険が強制適用されません。これらの事業者が法人化する場合は、社会保険の加入が必要になるため注意が必要です。

4-2.パート・アルバイトにも就業規則や社会保険が必要

従業員がパートタイマーやアルバイトであっても就業規則が必要です。パート・アルバイトも含めた従業員が10人以上の場合は必須となり、10人未満の場合も作成することが望ましいとされています。

社会保険への加入も必要となります。現在(2023年12月)は従業員数101人以上の企業で、2024年10月からは従業員数51人以上の企業において、以下の条件のパート・アルバイト従業員が社会保険加入の対象となります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が8万8千円以上
  • 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない

50人未満の企業の場合は条件がややゆるくなり、以下のパート・アルバイト従業員が社会保険の対象となります。

  • 週の所定労働時間及び月の所定労働日数が正社員の3/4以上(週30時間以上が目安)
  • 契約期間が2ヶ月超

出典:社会保険適用拡大特設サイト|厚生労働省

5まとめ

事業の拡大には従業員の力が必要ですが、従業員を雇い入れるためにはさまざまなルールがあり、労務についても詳しく知る必要があります。対応を間違えると、従業員との間でトラブルになるばかりか、訴えを起こされてしまうこともあり得ます。

そのため、労務に関してわからないことは労働基準監督署などに相談しながら進めていくとよいでしょう。労働基準監督署では労基法に関わる労働安全衛生や労災保険、労働条件関連の事柄などについて相談を受け付けています。

解雇に関しては民事上の問題となるため労働基準監督署では相談できず、主に弁護士への相談となります。顧問弁護士など、普段から相談できる弁護士がいるとより安心して経営に集中できるでしょう。

2024年1月

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