まちビジネス事業家 木下斉
まちビジネス事業家 木下斉
第2回

地域活性化の現場から学ぶ、
多様な価値観との
上手な付き合い方

地域事業開発を推進するプロフェッショナルであり、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下斉さんに、地域活性化ビジネスやそれにまつわるコミュニケーションなど、貴重なお話を伺う本企画。
第2回は「地域活性化の現場から学ぶ、多様な価値観との上手な付き合い方」。ビジネスを行う中で木下さんが地元の方々と関わる上で感じたコミュニケーション上の課題や、地域事業開発を経験するうちに身に付いたコミュニケーションスキルについて、明日からビジネスパーソンが実践できるノウハウをお伝えします。

地域活性化の現場は
「特異なコミュニティ」

一般的なビジネス現場と異なり、地域活性化の現場においてはコミュニケーションのスタンスが大きく異なる、と木下さんは語ります。

「普通のビジネスであれば、その産業分野に近い人とだけやり取りしていればいいかもしれませんが、街には老若男女いろんな方々がいます。お客様でも取引先でもない人、ただその地域に住んでいるだけの人もいます。そこでは『どんな人が来ても対応できる』といったコミュニケーション力が必要です。」

どのような場面でも、反対する側の人間が5~10%程度いるというこの現場において生じる問題や課題について、木下さんはどのように対処しているのでしょうか。

「課題というのはある程度決まっていて、既存事業者の反発などがそのよい例です。その根底にはねたみや嫉妬といったものがありますが、実は何もやらないで不満を挙げていることが多いのが現状です。そのような何もしない相手に対して、厳しいことを言わなければならないこともあります。私は外部の人間であるからこそ強く言える立場でもありますし、言わなくてはならない立場でもあります。

ですから、対応方法によってチームの役割分担も考えることは大事ですね。たとえば、事業決裁の場面では私が話し、長くその地に住んでいる人を動かすには同じようなその地で長く商売を行っているメンバーに対処させるといった具合に『チームとして地域とコミュニケーションを取っていく』ということが、地域活性化の現場ではとても重要です。」

多くのビジネスパーソンが働く現場では、意見を言うことで「出る杭は打たれる」的に潰されてしまうこともありますが、そのように強く相手に提言して、プロジェクト自体が崩壊することはないのでしょうか。

「自分が行っているのは民業なので、誰か地域の声の大きい人が強く言ったからといってプロジェクトが破綻するようなことはないです。地元の賛成がないと地域の事業は潰れると思っている人がいますが、行政とか絡めなければ、政治家とか出てこないので、市場が評価してくれれば継続できます。とある都市でスタートする事業でも、地元経済界の専務の言うようにしなかったら、潰してやる、あいつらと取引するな、とあれこれ言われたこともありましたが、そこの合弁会社は今もちゃんと事業として継続しています。」

反対派を説得することに労力をかけすぎると、
プロジェクトは破綻する

また木下さんは、東京など関東圏の方が地方に対して思っているイメージには幻想があるのではないか、と考えています。

「地域活性化において、『地元と調和しないと事業がうまくいかない』と考えるのは違います。そもそも地元が賛成しているから成功している、という事業はほとんどありません。そもそもヤバい地元の声の大きい人の意見が通ってしまうと、むしろ市場からは支持されないどうしようもないサービスとなり、事業の継続性がなくなってしまい、事業のほうが破綻するんですね。賛成をもらうために事業を歪めてはならない。これは私なりの教訓です。出る杭は打たれるといいますが、打たれるのは当然と構えていれば、大したことではないのです。

逆にどんなに地元に稼ぎや雇用を作り、外から素晴らしいと思われているプロジェクトであっても、地元では評価されていないなんてざらにあります。地元で賛同が得られないから人が来ないかというと、やはりいいものには来るんです。もちろん地元から反対されるようにやるのではなく、反対される人がいても良いということです。大抵の場合は事業をスタートさせれば、賛成も反対もしていなかった無関心の中間層の人たちが、大抵は賛成に回ってくれます。」

「全国各地で地域に稼ぎを作る企業というとなにか大それたもののように思われますが、地方においては食材を作って地域の外に販売する飲食店も重要な産業です。最近では素晴らしいメニュー、サービスを提供するオーベルジュやレストランが日本のとんでもない地方に続々と誕生し、星を撮ったり、高い評価を受けるようになっています。

私の知り合いの飲食店でも、もともと父親がやっていた定食屋に息子さんが修行して帰ってきてからは、地元に住む人以外の人にこの場所を目的に来てくれる店にしようと、大きく地元の食材を使った和食店として大きく改装。客単価も今までの10倍に変えたんですね。そうしたら、地元の人たちからは『お金に目がくらんだ』とか言われたわけです。

しかし、地元相手に商売を行うのではなく、何より地域の外から外貨を獲得できる商売へとギアチェンジを行ったことで、結果的には優秀な料理人を雇用出来たり、地元食材をより高値で仕入れられたり、新メニュー開発に投資できたり、良いことばかりです。地元の人だって毎日は行けないけど、年に数回の記念日とかに使える店になった。短期的な地元の反対とかは、むしろ中長期では地域に必要な事業には不可欠とも言えるのです」


さらに「対面すべきは地元の人たちだけでなく、地元の人にいるお客さん、地域の外の財布なんだ」と知ることは重要であると、木下さんは続けます。

「誰かの意見を無視するのは平等ではない、全員が合意できるものをという地元側の理屈を客商売に持ってきてはいけません。地元の外にいる人を優先させ、地元の所得で毎日は食べられない、だけどとてもいい商品やサービスを提供し、ブランディングやプロモーションを行っているようなプロジェクトは、地元の人たちからすると良いイメージを持たれません。しかし、外からのお金の流れが生まれるそのようなプロジェクトは、よくよく見ていくと、一見関係ないと思っている人たちもその恩恵にあずかっているのに気づいていないだけなんです。」行政の補助金などの支援に頼るのではなく、マーケットと向き合うことの方が、地域が伸びていく上では大事である、と木下さんは結論付けます。

さらに理解や和解が必ずしも結論となるとは限らない、そう考える木下さんは、反対する勢力に対して「できるだけコミュニケーションを取らない」というスタンスを取ります。

「反対派の説得に労力をかけすぎるプロジェクトは、大抵の場合うまく行きません。事業は始める前に賛成をとるのに躍起になって、反対者への説明なんかに時間を使うよりも、数少ない仲間、賛同者の声に耳を傾け、よりよいサービスをつくるべきです。よって、できるだけ反対者に向けたコミュニケーションは削ぎ落したいと考えています。やはりプラスを作る人とコミュニケーションする方が楽しいですし、話が前に進んで行きますしね。」

多様性を否定しない
コミュニケーション

地域活性化を通じて、世代や価値観が違う方々とコミュニケーションをとる機会も多い木下さんですが、現場で感じるコミュニケーション上の課題については次のように考えます。

「『やる』か『やらない』か、『正解』か『間違い』か、しか答えがないと思っている人も数多くいます。地域で一丸となってやろう、皆で意見をすり合わせよう、和をもとう、と日本では小学校から強烈に教育を受けますが、これが多様性を破壊していると思っています。」

実行する前段階から意見やアイデアをつぶし合うことが『調整』だと考えている人が多い中、このような調整が結果として時間や労力の無駄を生み出すことにつながります。

「無理やりアイデアを1つにとりまとめようとするから、誰も必要としない中途半端なモノや企画が出来上がってしまい物事がおかしくなってしまう。例えば、名産品としてコメと栗とがあった際に何か新商品を考えるとします。その時に「コメをメインにした商品がいい」「栗をメインにした商品がいい」というアイデアを出した人たちがいるとします。そうすると、よくあるケースとして、この人達の意見の間を取って魔改造した「コメと栗を1つに融合したお菓子」が誕生するわけです。そうなると、それぞれアイデアを出した本人たちが『自分の考えたものではない』と、力を入れて取り組むことを放棄してしまうんです。

そうならないためにも、私はできれば『5つのアイデアがあれば、5つ試してみたらよい』と考えます。そして『自分で何をすべきなのか』『やってみたらいいんじゃないか』ということに対し、自ら舵を切ってやってみる。『正解』か『間違い』かではなく、『正解』と『正解』ということもあるとわかった上で、相手に無駄な説得をしないコミュニケーションも必要です。やってみなきゃ結果はそもそもわからない。皆で意見をすり合わせたから成功するわけでもなく、むしろ主人公のいない折衷案にしかならないのです。」

既成概念にとらわれない使い方ができる
FORESIGHT VIEW

ビジネスカバンにもすんなり入る大きさなので、持ち運びに不便を感じません。

これまでのプロジェクターには「会議室など密閉された空間で利用するもの」というイメージがあった木下さん。しかしFORESIGHT VIEWなら屋外利用も十分可能であると考えます。

「FORESIGHT VIEWはバッテリー駆動により電源アダプターが不要ですし、明るくコンパクトで持ち運びやすいので、公園や海辺の施設、屋外イベントなどで使えるのではないでしょうか。屋外では必ずしも電源設備があるわけではないので、FORESIGHT VIEWを利用すれば、これまで実現できなかった空き店舗でのミニシアター的な企画だったり、建物の壁に投映したり、といった新しい使い方も気軽にできますね。屋外に持ち運べることで利用の幅が広がることを考えると、会議室利用だけでなく、野外イベントへのプロジェクター貸し出し事業への可能性も広がります。その点でもコストパフォーマンスが高いプロジェクターであると思いますね。」

さらに木下さんはビジネス以外の利用シーンとして、最近話題のグランピングや、テレビのない宿といった環境で連泊をする機会に、「ネット動画を投映し、映画館のようにしてみんなで鑑賞する」といった使い方も提唱してくれました。

「FORESIGHT VIEWがあれば、昼はビジネスに、夜はリクリエーションにも使えます。プロジェクターを持ってくる人はほとんどいませんし、マイプロジェクターを持ち歩くという発想はこれまでにはなかったものです。FORESIGHT VIEW一台で今後の活動の幅は大きく広がっていくのではないでしょうか」

ご自身では今後さらにどのような場所でFORESIGHT VIEWを使っていきたいか、という問いには

全国各地で開催されている勉強会「狂犬ツアー」でも持ち運びができるFORESIGHT VIEWが活躍中です。

「自習勉強会の「狂犬ツアー」、社会人学校「都市経営プロフェッショナルスクール」の集合研修などで積極的使っていきたいですね。一台もっていれば、持参するFORESIGHT VIEWと現地にあるプロジェクターを使い、一台は資料を投映し、もう1台を遠隔ミーティングの画面表示する、といった具合に使えると自由度が高まりますね。」

実際に使用してみないとわからないという方も多い中、現在『体感プログラム』を実施しているFORESIGHT VIEW。まずはトライアルで使用いただいた上で導入を検討してみるのはいかがでしょうか。

以上、2回にわたって木下斉さんに、地域活性化の現場で培った経験をベースとした、コミュニケーションを円滑に行う手法について熱く語っていただきました。プロジェクト遂行のために、複数ある議題から何が大事であるかを見極めた上で、重要なものに選択集中することは重要です。その手段として「相手に無駄な説得をしない」「お互い関わらない」というコミュニケーションも必要。「根回し」や「説得」が当たり前のように行われているビジネスシーンにおいて、「距離を置くこともコミュニケーションである」という発想は、非常に斬新であると感じました。

「現状を変えたい」「停滞しているプロジェクトを前進させたい」といったビジネス上の課題に遭遇しているビジネスパーソンの方は、ぜひ明日からでも木下流コミュニケーション術を実践してみてはいかがでしょうか。

木下斉

木下斉

まちビジネス事業家

1982年東京生まれ。1998年に早稲田大学高等学院入学。在学中である2000年、全国商店街合同出資会社社長に就任。2005年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一橋大学大学院商学研究科修士課程に進学。在学中は経済産業研究所、東京財団等で地域政策の調査研究業務に関わる。2000年「IT革命」で新語・流行語大賞受賞。一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事。熊本城東マネジメント株式会社代表取締役など各地の事業会社の役員を務めると共に、内閣府地域活性化伝道師や各種政府委員も務める。

主な著書は書籍「まちづくり幻想」SB新書、書籍「地元がヤバイ…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門」ダイヤモンド、『地方創生大全』(東洋経済新報社)、『稼ぐまちが地方を変える』(NHK新書)、など多数。近著の「まちづくり幻想」は尾崎行雄記念財団・咢堂ブックオブザイヤー2021 地方部門大賞を受賞。

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