元日本マイクロソフト業務執行役員 澤円
元日本マイクロソフト業務執行役員 澤 円
第1回

相手の心を掴むプレゼンの極意

元日本マイクロソフト業務執行役員で、「伝説のマネージャー」、「プレゼンの神」としてカリスマ的な影響力を誇る澤円さんに、これからの世界でビジネスを成功に導くための考え方と能力についてお聞きしました。第1回は「心を掴むプレゼンの極意」。「人は元来プレゼンが苦手」とも話す澤さん。共感を呼び起こすプレゼンはどうすればできるのか? ご教示いただきます。

プレゼンのコツの前に、
基本のキを理解する

年間200〜300回ものプレゼン・講演をこなし、「プレゼンの神」の異名を持つ澤さん。自分の想いや企画の意図を伝え、相手の新しいアクションを引き出すプレゼンは、これからのビジネスになくてはならない手段です。澤さんの著書『世界No.1プレゼン術』(ダイヤモンド社)の中でも“現代社会において「仕事でもっとも必要なスキルを一つ挙げてください」と言われたら、僕は迷うことなくプレゼン力と答えます”と記しています。澤円流・プレゼン術の極意とは。

「優れたプレゼンとは何か。それを知るには、まず『プレゼンの基本のキ』から理解しましょう」と澤さん。
「何事もコツだけ知っていても意味がありません。味噌汁の作り方がわからなければ、『だしパックの量を2倍にするのが美味しい味噌汁を作るコツ』と聞いたところで何もできないでしょう?」

なるほど、おっしゃる通りです。では、“プレゼンの基本”とは何でしょうか?

「『プレゼン』とは『プレゼント』。これが基本的な考え方なんです。誰だってプレゼントを選ぶとき、相手がどうしたら喜んでくれるかを考えるはず。同じようにプレゼンを組み立てれば、相手が求める行動やゴールに繋がりやすくなり、成功の確率はかなり上がります。」

「ありがちなのが、自社の製品やサービスのスペックなどを延々と話してしまうこと。僕はこれを『プレゼンテーションの罠』と呼んでいます。情報としては正しい。しかし、重要なのはその製品やサービスに触れて受け手がどんなハッピーな体験をするか。そんな瞬間が訪れるのって素敵だと思いませんか? と伝えなくてはいけない。」

「よく、プレゼンの目的を『製品やサービスを理解してもらうこと』と考えている方がいます。それは必要条件であって、十分条件じゃない。プレゼンを聞いた結果として、誰かに言いふらしたくなったり、思わず行動したくなる、そんな価値あることをプレゼンしましょう。」

自分目線ではなく、相手が知りたいこと、求めている(あるいはそれ以上の)体験を逆算しながら話していく。そうすることで相手は自分ゴトとして話を受け入れ、共感してもらえるとします。

また、自分をオープンにすること(自己開示)もプレゼンにおいては大切と澤さん。

「信用できない相手の話って耳に入ってきませんよね。相手との信頼関係を築く、これも重要です。そのためには、例えば自分が信じていないことは話さない。『自分自身が本当に信じているからあなたにおすすめできる』というマインドでプレゼンをしましょう。」

スライドの文字は少なく。
伝わりやすさを意識した工夫を

続いて、スライドについてもお話を伺いました。相手に伝わるプレゼンスライドはどう作ればいいのでしょうか。

「文字を少なくしてください。視覚情報が多すぎると、脳が文字を読みにいってしまうので、耳が留守になります。いかに耳を自分に向けてもらうかに頭を使いましょう。」

「具体的には、ですますや句読点を削ります。次に文節は少なめに。小学校の国語の授業で習った『◯◯ね』と、”ね”を付けられるまとまりが文節です。情報をシンプルにしてあげると、スライドは見やすくなり、集中してもらえます。」

文節を少なくすると文章は伝わりやすくなる

また、澤さんは最近、プレゼンに手書きを取り入れているそうです。コロナ禍でオンラインプレゼンが多くなった中、気づきが一つあったとのこと。

「オンラインプレゼンだと、情報がすべて平面になってしまうんですね。対面なら少なくともプレゼンターである僕は立体。もう少しプレゼンに動きが欲しいと思って、手書きを取り入れてみたのです。」

「しゃべりながら同時に手書き文字やイラストをスライドに書き込むとライブ感が出ますし、手書き特有の味もあるので訴求力が高まります。これは対面でも応用できます。強調したいところにぴっと線をひいたり、コメントを追加したり。機会があったらぜひ試してみてください。」

プレゼンを録画して
客観的に自分を捉える

次は、話し方について。プレゼンで上手に話すためにはどうすれば良いのでしょうか。意外にも、澤さんからは「うまく話そうとしなくていいんですよ」という答えが返ってきました。

「人間は、人前で話すのが元来苦手。気にしすぎると、うまく話さなきゃという呪いで自分を縛り付けることになります。自分のベストが出せればOKくらいの気持ちでいい。プレゼンするって決意した時点で、すごいことをやろうとしている。自信を持ってください。」

ただ、そうは言ってもうまく話せているか心配、と悩んでいるプレゼンターも多いと思います。アドバイスを一つお願いしてもいいでしょうか。

「自分が話している姿を録画してみるのはいいですよ。オンライン会議の記録でもいい。重要なのは、相手からどう見えているのか。それがわかれば、印象をよくする動きっていうのが自然に出てくるんじゃないかなと思います。」

優れたプレゼンターは、
Q&A力が例外なく高い

プレゼンの最後に控えているのが質疑応答。プレゼンが苦手な人の原因のナンバーワンが、この質疑応答ではないかと澤さんは指摘します。

「プレゼンテーションを左右するのはQ&A力(質問する力や答える力)なんです。プレゼンの達人は例外なくQ&A力が高い。」

よくあるのが、質疑応答を恐れるあまり、すべてを完璧に話しきろうとしてしまうことだそう。そういう人に限って質問されて撃沈してしまうと澤さんは言います。

「質疑応答は恐れすぎてはいけません。答えられたら加点です。答えられなくても減点にはならないと考えてしまいましょう。100%相手が満足する答えを返さなくても大丈夫です。」

では、自分で答えられない質問が出てきたらどうすればいいのでしょうか?

「マジックワードをお教えしましょう! 『良い質問ですね!』って答えるんです。その間に回答を考え、もし出てこなかった時は『僕が答えるにはもったいないくらい良い質問なので、別の方に後で答えていただきます』と返します。アイスブレイクにもなり、アンサーはちゃんと用意するという約束にもなります。プレゼンは意地悪な質問によって恥をかかされる公開処刑の場ではないんです。」

多人数に想いを伝える
プロジェクターは
プレゼンと好相性

コロナ禍の影響で対面プレゼンの割合は減ったものの、澤さんはオンラインで年間300回ほどのペースでプレゼンをこなされています。特に対面プレゼンの際のツールとして重宝しているのがプロジェクターです。

「対面で人と話す時にプロジェクターは必須アイテムですね。マイクロソフト時代も製品デモを行う機会が多く、よく活用していました。」

「多くの人に視覚情報を届けられる。これがプロジェクターの利点ですね。モニターでのプレゼンだと、部屋の広さや人数によっては伝わり方に差が出ます。大きなスクリーンなら多くの人に一発で伝わります。」

カシオでは、2021年3月に新機軸のプロジェクターとしてFORESIGHT VIEWを発売。十分な明るさを確保(JIS規格2000ルーメン)しつつも、A5サイズにまで小型化し、本体質量約1.1kgとクラス最小・最軽量を実現。

※2021年8月時点。JIS X 6911準拠で明るさ2000ルーメン以上のプロジェクターとして。カシオ調べ。

「とにかく明るくて画質が綺麗ですねー。この大きさでこの画質、文句なしだと思います。あと、コンパクトなので、取り回しがすごく楽です。カメラ用の三脚につけることもできるので、設置の自由度が大変高いです。」

「以前も小型プロジェクターを使っていましたが、明るさがちょっと……という感じでした。比較してみるとまったく違いましたね。」

澤さんに準備からプレゼンまでを実演いただきました。Wi-Fi接続にも対応(CX-F1のみ)しています。

澤さんが実演のCX-F1を
体感してみませんか?

FORESIGHT VIEWはケーブルをつなぐなどで自動的に電源が入り、約5秒で投映開始できるところも大きな特長です。

「接続に時間を取られるのはかなり不利。実際、マイクロソフト時代にもプロジェクターが映らなくて会議ができない、というシーンに遭遇しています。パソコンでいうとHDDとSSDくらい速度の違いがありますね。」

より使いやすいプロジェクターでプレゼンすることは、勝率にも関わってきますか、澤さん?

「そう思いますよ。機材と戦ってはいけないんです。時間の無駄ですし、焦ることで平常心に戻すのにもパワーがいる。何より、待たされた人もストレスを感じてしまうので、勝率がどんどん下がってしまいます。」

訪問先のプロジェクターの機種が古かったり扱いにくかったりで、接続に時間を要することもあったとか。プロジェクターを持ち込めれば、そんな心配もないとします。

また、オンラインプレゼンの際の画面共有の悩みに対し、FORESIGHT VIEWの活用を提案していただきました。

「画面共有がうまくできなかったり、高負荷でマシンの動作が鈍くなった経験はありませんか? 画面共有をせずに、プロジェクターで投映してみてはいかがでしょうか。スクリーンの横に立って、スライドを示しながらプレゼンをするんです。臨場感が増したプレゼンになると思います。設置自由度が高いので好きなところでプレゼンできますね。」

「現在はコロナの影響で対面プレゼンの機会は少なくなっていますが、今のうちにツールに慣れてReadyな状態にしておくことで、いざという時の活用がスムーズになるでしょう。今から使うのが楽しみですね。」

澤さんにとってプレゼンとは、という質問に「人のハッピーな未来を伝えること」と答える澤さん。新しいことをやってみようとか逆にやめてみようといった、誰かが幸せになる行動のきっかけを作れるのがプレゼンの醍醐味です。ぜひ澤円流プレゼンを実践し、勝率を高めてください。

次回は、組織マネジメントをテーマに、自走性の高い組織のあり方についてお聞きしていきます。ご期待ください。

澤 円

澤 円

株式会社 圓窓 代表取締役
元 日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員
琉球大学 客員教授

1997年に日本マイクロソフト株式会社に入社し、プリセールスSEなどを経て、マネジメント職に転換。数々のセクションでピープルマネジメントを行う。2006年にはビル・ゲイツ氏が優れた社員にしか授与しない「Chairman’s award」を受賞。2020年8月 日本マイクロソフト社を退社。自身が代表取締役を務める株式会社 圓窓は2019年10月に設立した。著書に『「疑う」からはじめる。 これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』(アスコム)『個人力――やりたいことにわがままになるニューノーマルの働き方』(プレジデント)『マイクロソフト伝説マネジャーの世界No1プレゼン術』(ダイヤモンド社)ほか、多数。

株式会社 圓窓: https://ensow.jp

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