自走性を高める
組織マネジメント
元・日本マイクロソフト業務執行役員で、「伝説のマネージャー」、「プレゼンの神」としてカリスマ的な影響力を誇る澤円さんに、これからの世界でビジネスを成功に導くための考え方や能力についてお聞きしました。第2回は「自走性を高める組織マネジメント」がテーマ。部下たちが主体的に行動し、結果を次々と出していくパワフルな組織はどうすれば構築できるのでしょうか。
マネジメントとは
「管理する」ことではない
プレゼンの極意をお聞きした第1回に対し、第2回は組織マネジメントのあり方について話のテーマを移します。澤さん、組織マネジメントにおいて大切なポイントとは何でしょうか?
「そもそも、僕は『管理職』という言葉が嫌いなんです。どういうことかというと、『管理する』のがマネジメントじゃないってことなんです。管理するならAIとかの方がきちんとやってくれる。人間の行うマネジメントは、もっと奥深い、人間関係に深く関わるものなんです。部下を管理するのが上位役職者の仕事だと思っているなら大間違いです。」
話は、日本を取り巻く雇用形態の変化についても広がります。日本は長らくメンバーシップ型雇用といって、チームの中で役割を持ち、仕事を遂行していくスタイルを採ってきました。対して、海外ではジョブ型雇用が主流。ジョブディスクリプションに沿って契約された範囲の業務に対して責任を持つ雇用形態です。
「どちらが良い、悪いと言い切れない部分もあって、メンバーシップ型雇用はチームでしか通用しないスキル構築になりがちです。キャリアプランニングの視点で考えるとリスクが高くなります。一方、ジョブ型雇用だと、タスク単位になるのでそれしかやらない人たちが出てきてしまう。これからの世の中、居心地が悪くなるし、今後活躍の場が狭くなってしまうかもしれません。」
これからは、緩やかにつながりつつも、個々の役割をちょっとずつはみ出して仕事をこなしていくようなコミュニティーの形成が進むだろうと澤さん。その全体をファシリテートしていくのがマネージャーの仕事になっていくと言います。
「よく例え話で言っているのがキャンプです。キャンプって色々な人たちが集まりますよね。力持ちで水を汲んでくるのが得意な人がいたり、火を起こすのが早い人がいたり。でも、水を汲んできただけで、あとは何も手伝わずにご飯が出てくるのを待つだけ、だったら嫌なやつですよね。普通は、水を汲んだ後、じゃあ薪を持ってこようかとかになるわけです。一つのコミュニティーの中で、いかにみんながキャンプという時間を楽しく過ごせて終わるか。その目的達成にみんなを導いていってあげるのがこれからの組織マネジメントに求められることです。」
キャンプの最中には、さまざまな障害が立ちはだかります。カラスが来るかもしれない。雨が降るかもしれない。その時に、俯瞰で状況を判断し、チーム分けをしたり指示を出したり、対応策を練ったりするのがマネージャーの役割となります。事細かに縛り付けるのではなく、それぞれが困ったときに道を示してあげるのがポイントです。
報連相は性質の違いを理解して正しく運用
チーム内の連携を図るために必須の「報連相」にも、マネジメント視点でぜひ覚えていただきたいポイントがあります。3つの性質の違いを踏まえて分けて考えるようにと澤さん。
「報連相は時系列で分類でき、かつ大切なことがそれぞれ異なります。『報告』は過去の話ですね。例えば、売り上げや来店者数など、数字に関することなどは報告です。求められるのは正確性なので、表計算ソフトやシステムを活用して自動化した方がいい。下手に人を介すると、数字をよく見せようとするなど、ろくなことがありません。『連絡』は現在を起点にしたその前後のもので、明日はお休みしますとかですね。求められるのは即時性なので、双方の都合が一致した時にしか会話ができない電話よりも、メールやチャットツールなどの方が合理的でスムーズでしょう。対して、『相談』というのは未来のことですね。将来どんなポジションに行けばいいか、こう考えてみたんですけど、どう思いますか、など悩みがあって、その決断に迷って相談しにくる。答えがないことが多いんです。」
答えがないということは、パッと伝えて終わりではなく、じっくりとヒアリングをし、答えを一緒に考えてあげるプロセスが必要になります。現在はテレワークで部下と遠隔コミュニケーションを取ることも多いと思いますが、対面で膝を付き合わせながらというのも大切とのこと。
「もちろん対面でないと相談を受けられない、ということではありませんよ。環境に依存していてはいけません。ですが、落ち着いた空間でコミュニケーションがじっくり取れるという意味で、対面の価値が生きてくるという意味です。」
部下を縛り付けず、
自走性を高めるのが
マネージャーの仕事
組織マネジメントの悩みの一つは、部下の行動のコントロール、と思っている方はいらっしゃいませんか? 例えば、部下が自分の指示を待たず、勝手に判断をしてしまった……。「俺は聞いてないぞ、なんで事前に言わないんだ」と、叱る方がいるかもしれません。ですが、澤さんは部下の自走性を尊重せよと言います。
「褒めれば良いんです。主体的に考え、動いたことを。どんどんやって結果を出してくれれば良い。もし結果が出なかったら? 失敗したら? その時は、どこが悪かったのか一緒に観察してみよう、と次の一歩が出やすい環境を作りましょう。叱ってもモチベーションが下がるだけですし、そんな環境下で結果が出るわけはありません。」
ただし、部下のモチベーションを高めるのが上司の仕事ではない、とも澤さんは言います。
「モチベーションを高めるかどうかは、本人が決めればいいだけのことです。なぜか? 高いモチベーションと仕事の成績にはあまり相関関係がないからです。ですが、モチベーションが下がるといい成績は出ないというのは確実に言えるので、前述したような環境づくりは大切です。」
自走性を高める
プレゼンツール、
FORESIGHT VIEW
目指したいのは、一人ひとりが裁量権を持ち、各々の判断で商談を進め受注してくるような自走性の高い組織づくり。その取り組みの一つとして、プレゼンツールであるFORESIGHT VIEWを持たすことは効果的と澤さん。
カシオの小型プロジェクター FORESIGHT VIEW。A5サイズ、本体の質量約1.1kgとコンパクトボディで、カバンの中に常に入れておくことができます。
「プレゼンに役立つ表現力の高い武器を持たせること、それはすなわちプレゼンの裁量権を預けるということですね。提案のチャンスはいつあるかわかりません。お客様から、『以前話してくれた企画、詳しく聞かせてよ』と突然プレゼンのオファーがあることも。そんなとき、カバンの中にFORESIGHT VIEWが入っていれば、スマートフォンと無線で繋いでパッとプレゼンができる※。このスピード感は、プレゼンの勝率を上げますし、チームの自走性を高めてくれるのではないでしょうか。いつでもReadyな状態に保っておくことで、チャンスが来た時に逃さずしっかり掴むことができます。」
※無線投映はCX-F1のみ対応
スマートフォンやタブレットなどと接続して大画面でプレゼンが可能です。
全てがリセットされた今こそ、
柔軟な思考でビジネスを
マネージャー側かプレイヤー側かに関わらず、ビジネスにおいては常に自分をアップデートさせていくことが重要。そのアップデートを阻む要因の一つが「常識」ではないでしょうか。澤さんは常識にとらわれない考え方・働き方を一貫して打ち出しており、著書にも『「やめる」という選択』(日経BP)、『「疑う」からはじめる』(アスコム)、『個人力――やりたいことにわがままになるニューノーマルの働き方』(プレジデント社)といった、常識に対するアンチテーゼのようなタイトルが多く並びます。
「日本は同調圧力が強いと思います。周りに合わせることが正解だと思ってしまう。あとこれも問題なのですが、正解がある前提で物事を捉える癖がつきすぎている。初めからどこかに正しい答えがあるんじゃないかと。でもそう思った途端、『考える』ではなくなり『サーチ』になってしまうんです。『考える』と『サーチ』は似て非なるものです。」
0から1を生み出すのが仕事。学校の問題を解くように答えをサーチしていては、新しい発想は生まれません。常識も、捉え方によっては「周りからそうと決めつけられている正解」であり、マインドブロックの一種なのかもしれません。
そんな中、新型コロナウイルスの出現により環境は一変。人々の生活・ビジネス様式に大きく制限がかかり、今まで良いとされていたものが否定されてしまいました。
「しかし、その制約は新しい気づきを与えてくれたと思います。移動ができない、人と会えないというのはどういうことなのか、実際に会えなくてもオンラインである程度笑顔を伝えることができることに気づいたり、あるいは対面じゃないと伝わりにくいことを再認識したり。」
今、澤さんは現在拠点を4箇所に構えています。そのうちの一つは千葉県山武市の九十九里浜にある第2の家。旅行が自由にできなくなり、代替手段として非日常が味わえる海辺の家を購入したそう。
「いつも同じ場所にいると、思考が固まってしまうんです。なので、定期的に場所を変えて頭をデフラグする。今まではそれが旅行だったわけですが、今や海外にいくこともなかなかできなくなってしまった。そんな中で、別の場所でのんびり過ごすという選択肢を作りたくて。普段暮らしているところを固定にしなくてもいいんじゃないかって思ったんです。」
すべてがリセットされた今、澤さんが実践するような、概念や場所にとらわれないビジネススタイルはますます広がっていくでしょう。個々が様々な場所で活躍するような状況こそ、高いモバイル性能を持つFORESIGHT VIEWのようなツールがあると組織として自走性が高まります。実現に有効なツールは上手に取り入れて、常識にとらわれない新しい組織づくりを目指しましょう。
澤 円
株式会社 圓窓 代表取締役
元 日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員
琉球大学 客員教授
1997年に日本マイクロソフト株式会社に入社し、プリセールスSEなどを経て、マネジメント職に転換。数々のセクションでピープルマネジメントを行う。2006年にはビル・ゲイツ氏が優れた社員にしか授与しない「Chairman’s award」を受賞。2020年8月 日本マイクロソフト社を退社。自身が代表取締役を務める株式会社 圓窓は2019年10月に設立した。著書に『「疑う」からはじめる。 これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』(アスコム)『個人力――やりたいことにわがままになるニューノーマルの働き方』(プレジデント)『マイクロソフト伝説マネジャーの世界No1プレゼン術』(ダイヤモンド社)ほか、多数。
株式会社 圓窓: https://ensow.jp