Vol.1
あなたは対面派?
非対面派?
―コロナ禍のビジネスコミュニケーションについて考える―
新型コロナウイルスの感染拡大は、ビジネスの世界における人と人とのコミュニケーションに激的な変化をもたらしました。在宅勤務やテレワークが普及する中、これまで当たり前のように行われてきた対面によるコミュニケーションが制限され、その代替手段としてWeb会議に代表されるような非対面コミュニケーションが急速に拡大しています。
非対面コミュニケーションのメリットが喧伝され、これさえあれば他の手段は必要ないといった極端な意見までも散見している今だから、本コラムではあえて相手と直接顔を合わせる対面コミュニケーションに注目。
Withコロナの世界においても、ビジネスに欠かすことのできないコミュニケーションのこれからについて考察します。
対面/非対面コミュニケーションの現状は?
まずは、対面/非対面コミュニケーションの現状を把握するべく、ビジネスパーソンを対象に実施したアンケート調査の結果をご紹介します。
コロナ禍におけるビジネスの現場では、コミュニケーションにどんな変化が起こっているのか、詳しく見てみると…。
調査①「対面商談・プレゼン実施頻度変化」
対面での商談や外部向けプレゼンテーションの実施頻度についての質問では、ほぼ半数の人が“増えたあるいは変わらない”と回答。“やや減った”と答えた人を合わせると、7割以上の人たちが対面コミュニケーションを今でも選んでいることが分かります。
対面商談プレゼン実施頻度変化(n=103)
調査時期:2020年8月末/回答者数n=103
調査②「対面での商談・外部プレゼンが減った理由」
対面での商談・外部プレゼンが減ったと答えた人にその理由を聞いたところ、圧倒的多数を占めた回答が、“コロナの影響でアポイントが取りづらくなったから”、“コロナの影響による外出自粛があるから“という2点でした。
いずれの回答でも、機会の消失が対面コミュニケーションの減少につながった理由としていることから考えると、新型コロナウイルスの流行がなければその数は減少しなかったのかもしれません。
この1年間で対面での商談・外部プレゼンが減った理由(複数回答/n=54)
ビジネスにおける対面コミュニケーションのメリットとデメリット
「商談・外部プレゼンを対面で実施する際の満足点」の調査によると、対面コミュニケーションの満足度は「相手とのコミュニケーションの深さ(52.4%)」「説明の伝わりやすさ(48.5%)」「説明のしやすさ(43.7%)」が突出して高くなっています。
商談・外部プレゼンを対面で実施する際の満足点(複数回答/n=103)
対面コミュニケーションのメリット
①相手とのコミュニケーションが深い
調査結果からも分かる通り、対面コミュニケーション最大のメリットは、相手との信頼関係が築きやすいことです。身振り手振り、ちょっとした表情の変化などは、直接会えばこそ気付けるというもの。そこから相手の気持ちや考えていることを細かくくみ取ることで、顧客や取引先の信頼を得ることが可能になります。
さらに、目の前の相手を五感すべてで観察することにより、隠れたニーズなどを的確に探り当てることができるのも、対面コミュニケーションならではのメリットです。
そうしたメリットは、社内での意思疎通においても効果を発揮します。同僚と顔を見合わせて会話すれば、お互いのパーソナリティに対する理解が深まり、仕事における連携をよりスムーズにしてくれます。
②説明内容が伝わりやすい
非対面によるWEB会議には、一人ずつでしか発言できないことで円滑なプレゼンテーションを妨げてしまう面があります。
その点、対面であれば説明役のプレゼンターとは別の人が話の合間に補足説明するなど、内容が参加者に伝わりやすいよう工夫することも可能です。
さらに、プレゼンターが話している途中で疑問点を質問したり、参加者同士で意見交換することができるなど、コミュニケーションの活性化にも役立ちます。
対面コミュニケーションのデメリット
①訪問のために移動時間がとられ、交通費もかかる
対面コミュニケーションのデメリットは、非対面と異なり移動時間を要するという点です。顧客や取引先といった社外の相手を訪問するには、移動のために時間を割く必要があります。しかし、昨今の働き方改革で残業もしづらく、限られた時間内でより効率的に業務をこなさなければならないビジネスパーソンにとっては、この移動時間を確保するのが一苦労。スケジュールに四苦八苦している人も少なくありません。
さらに、移動には交通費がかかります。相手が遠方の場合は高額になることも覚悟しなければなりません。
たとえ訪問先が近くとも、月単位、年単位で考えれば、かかる時間やコストは莫大で、けっして軽視できるものではありません。
②無駄な訪問は嫌われる
一昔前のおおらかな時代ならいざ知らず、現代は見知らぬ人の訪問に敏感な上、それが不必要な商材の売り込みともなればより一層嫌われる傾向に。
しかも、コロナ禍の現在においては、不要不急の訪問自体が多くの企業から敬遠される傾向にあるようです 。
対面コミュニケーションが再評価
昨今、Web会議をはじめとする非対面コミュニケーションを体験する人が増えています。
一方で、そのことが会って直接話しをする対面コミュニケーションのメリットに光を当て、あらためてその再評価につながっています。
説明だけなら電話やチャットで充分という意見もあるでしょうが、対面コミュニケーションでしか得られないメリットにビジネスパーソンの多くが気付き始めているようです。
対面コミュニケーションが真価を発揮するシチュエーションとは?
対面コミュニケーションは、ビジネスのどんな場面に合うのでしょう。その特色が活かされるおすすめのシチュエーションを解説します。
初顔合わせ
対面コミュニケーションのメリットは、相手との信頼関係を築けることと前述しましたが、特にお客さまと初めて会う際にその強みを発揮します。
お客さまが製品・サービスの購入に際して、この相手を本当に信用してよいのかという疑問を持つのは当たり前。そうした警戒感を、電話やWebのみの非対面で解消するのはかなりハードルが高いといえるでしょう。その点、対面で直接話しができれば相手との間に信頼関係を構築しやすく、交渉がスムーズに進む確率も高まります。
また、実際に会うことで相手の雰囲気や人柄を知ることもでき、今後の営業活動のプラスにもなるはずです。
詳細なサービス説明
新規顧客になり得るお客様との初商談が成功した場合、次のステップとなるのが自社製品・サービスのより詳細な説明となります。前述したように、対面コミュニケーションのメリットは、製品やサービスの説明がしやすく、相手も理解しやすいこと。お客さまに「この製品・サービスなら大丈夫だな」と納得してもらうためには、対面でのコミュニケーションが効果的です。
特に製品・サービスが高額なほど、顔を合わせてのコミュニケーションなくして成約を勝ち取るのは難しいといえるでしょう。
さらに、お客さまのニーズを掘り起こし、それに合った商材を提供する提案型営業にも、対面コミュニケーションが重要となります。相手のことをより深く知ることができるので、具体的かつ詳細なサービス提案につながる可能性が上がります。
クロージング
契約を結ぶためには、お客さまの心理的な壁を乗り越えるべく相手の興味や認識をしっかり確認していく作業が必要となりますが、その手助けとなるのが対面コミュニケーション。お客さまと信頼関係を築くことでその背中を押し、成約に結び付けるチャンスが広がります。
お客さまの検討状況をしっかり把握してから後押しするなど、対面コミュニケーションなら交渉における絶好のタイミングを逃さずキャッチすることも可能になります。
クロージングは、業務における悩みや課題を解決できるような提案を行い、お客さまがきちんと納得した状態で行われるべきです。人と対面してより深く相手とやり取りするスタイルは、そのために最適なコミュニケーション手段といえるでしょう。
まとめ
新型コロナウイルスの発生を機に、非対面コミュニケーションがビジネスの世界を席巻してきた流れは、これからも変わらず続いていくと思われます。
しかし、一方で対面コミュニケーションの必要性が再認識されています。対面機会が貴重になっていることから、その価値は今まで以上に増しているといえます。これまでお話ししてきた対面コミュニケーションのメリットを上手に活かせば、業績アップの切り札にもなり得えるのではないでしょうか。
対面と非対面、どちらのスタイルにもメリットとデメリットがあります。一方だけを採用するのではなく、それぞれを上手に組み合わせることで、自社にとって最適なコミュニケーションのスタイルを構築していきたいもの。それが、Withコロナの世界でビジネスを成功に導く特効薬になるはずです。
次回コラムでは、対面コミュニケーションの効果を最大化するための具体的な活用法をご紹介します。