ビジネスコラム

Vol.15
MRが苦手な医師と信頼関係を構築するためには
〜医師のタイプ別アプローチ方法〜

営業である以上、MRであれば売り上げを最大化できるように日々活動しているはず。しかし、医師とMRの間には、患者さんの命に関わる医薬品が介在するため、単なる顧客と営業という関係性以上に強固な信頼関係が必要とされます。だからこそ、苦手なタイプの医師との信頼関係構築に苦慮するMRも多いのではないでしょうか。

そこで今回は、営業手法のひとつである「インサイツカラー診断」について触れながら、苦手なターゲットと信頼関係を構築するための効果的なアプローチ方法についてご紹介します。

MR営業の難しさとは ~苦手な医師との関係構築~

MR営業の基本は、顧客である医師との信頼関係構築です。たとえ取り扱っている製品の効果が他社と同等だったとしても、強固な信頼関係があれば、自社製品を採用してもらったり、逆に他社から切り替えてもらったりとアプローチが可能になります。

しかし、どんなMRにも必ずといっていいほど「得意なタイプ」と「苦手なタイプ」の医師がいるはずです。得意なタイプの医師とはスムーズに信頼関係を構築し、どのような営業をすればよいのか不思議とアイディアが浮かぶ一方で、苦手な医師とは話が進まないどころかコンタクトを取ることすら難しいものです。しかしながら、営業として成果を出し続けるためには、苦手な医師との関係構築こそ大切にしなくてはなりません。

MRとしてこんな悩みにぶつかった時に有効な解決方法が、営業手法として用いられている顧客の「タイプ診断」です。苦手な医師のタイプを客観的、かつ、正確に分析することで、効果的な営業アプローチが可能になり、医師との関係性を変えることに役立つといわれています。

MRは営業職であるため、どうしても”顧客”と”担当MR”という枠組みに囚われてしまいがちですが、医師もMRも1人の人間。それぞれに個性があり、合う合わないという性格の違いは少なからずあるものです。しかし、お互いのタイプを知り、違いを理解した上で、よりよいアプローチができれば、「苦手だった医師」との関係性にも変化が生まれるはずです。そして、苦手な医師がいない状態になれば、営業成績アップはもちろんのこと、営業自体が面白くなってくることでしょう。

MR営業に使えるインサイツカラー診断とは

顧客のタイプを診断する手法のひとつに、「インサイツカラー診断」というものがあります。インサイツカラー診断とは、Insights社が開発した人間の思考・行動特性を分析するアセスメントツールで、ユングのタイプ論をベースにしたものです。自分と相手の特性を赤、緑、黄、青の4つのカラーエネルギーに分類することで、自己理解を深めると共に、互いの違いを尊重しながら『伝わるコミュニケーション戦略』を立てることができます。

ここからは、4つのカラーの具体的な特徴について見ていきましょう。

赤タイプ 黄タイプ 緑タイプ 青タイプ
『外向と思考の組み合わせ』 『外向と感情の組み合わせ』 『内向と感情の組み合わせ』 『内向と思考の組み合わせ』
目的を優先する 活動的である 周囲を気にかける 役割を重視する
目標を高く設定する 交流を好む 忍耐強い プロセスを組み立てる
合理的である 人を楽しませる 協調する 熟考する
結果を重視する 機敏である 全員の合意を志向する 客観的である

赤タイプ

『外向と思考の組み合わせ』

  • 目的を優先する
  • 目標を高く設定する
  • 合理的である
  • 結果を重視する

対外的な人付き合いを好みつつ、合理的な思考を優先する赤タイプ。目標を達成するためにリーダーとして周りの人を引っ張ることにも長けています。一方で、無駄なことや意識の低い行動を嫌い、『合わない人とは付き合わない』とハッキリしているのが赤タイプの特徴です。

黄タイプ

『外向と感情の組み合わせ』

  • 活動的である
  • 交流を好む
  • 人を楽しませる
  • 機敏である

人と関わることが好きで、感情や仲間意識を大切にする黄タイプ。ノリが良く、細かいことはあまり気にならないので、集団の中では明るいムードメーカー的存在です。一方で、感情を優先して行動するため、慎重な人や内向的なタイプの人とは話が合わないことも多いでしょう。

緑タイプ

『内向と感情の組み合わせ』

  • 周囲を気にかける
  • 忍耐強い
  • 協調する
  • 全員の合意を志向する

自分の意見よりも他の人の意見に耳を傾け、平和的に問題を解決しようと努める緑タイプ。赤がリーダー的役割とするならば、緑は補佐といったところでしょうか。人当たりが良くて誰からも好かれる印象がありますが、自分の意見を表に出さないので、周りに流されやすいという一面もあります。

青タイプ

『内向と思考の組み合わせ』

  • 役割を重視する
  • プロセスを組み立てる
  • 熟考する
  • 客観的である

自分の頭の中でロジカルな思考を組み立てることが得意な青タイプ。自分から積極的に周囲に働きかけることは得意ではありませんが、感情的にならず数値に裏付けされた論理的な意見を持っているので、チームの相談役やオブザーバーとしての役割を果たすことが多いでしょう。

以上が4つのカラータイプの代表的な特徴ですが、インサイツカラー診断の説明では4つのカラーで円を分割した絵が使われます。これは隣り合う色とは相性が良く、対角線の色のタイプとは仲良くなりにくいということを説明するためです。時計回りに赤、黄、緑、青の順に並んでいるので、もし自分が赤タイプであれば緑タイプの医師とは関係が構築しづらく、逆に黄や青タイプの医師であれば相性がよいということになります。

インサイツカラー診断の説明

もし苦手だった医師が自分とは逆のカラータイプだった場合、余計に苦手意識が強まってしまうかもしれません。しかし、ここで大切なのは、インサイツカラー診断は自分と相手の違いを知り、尊重することでよりよいコミュニケーションを実現するツールであるということです。

自分のカラーも診断することで、どのカラーの医師と相性がよいのか悪いのかが明確になると共に、客観的に医師との関係性を分析することで、見えてこなかった問題点にも気づくことができます。そして、問題を改善すれば、苦手な医師とも今よりもっとよい関係を構築することができるはずです。

インサイツカラー診断を活用したMR営業

4つのインサイツカラーの特徴と診断方法について分かったところで、次は実際にインサイツカラー診断を用いた医師へのアプローチ方法をご紹介します。具体的なシーンや話かけ方などについても触れているので、ぜひ参考にしてみてください。

MR:緑タイプ 医師:赤タイプの場合

合理的で無駄なことを嫌い、結果を重視するような赤タイプには、緑タイプがやりがちな世間話や前置きの長いアイスブレイクは嫌われる傾向があります。話しかける際には結論から説明するようにし、できるだけ端的に伝わるよう事前にまとめておくといいでしょう。

また、説明会などを実施する際、プロジェクターや資料の準備にだらだらと時間がかかってしまうことも、赤タイプにとってはNGです。もちろん、医師の貴重な時間を無駄にすることがないように、どの説明会であっても準備は急いで行うものですが、赤タイプの医師にプレゼンする時は、いつも以上に念入りに事前準備してスピーディーに対応する必要があります。

例えば、製品説明にプロジェクターを使うなら、接続等で手間取って医師を待たせたり起動に時間がかかってストレスを感じさせないためにも、持ち運べてバッテリーで駆動する高性能プロジェクターなどを利用するとよいでしょう。

自分自身の人柄や性格を相手に自然に伝えることは難しいので、営業ツールもセルフプロデュースの一環と考え、デザイン性も高く合理的で無駄のないものを使用することで、自身のスタイルを好意的に印象づけることができるはずです。

MR:青タイプ 医師:黄タイプ

論理的で内向を好む青タイプは感情を表面に出すのが苦手なので、ノリや会話のテンポを重視する黄タイプとは上手く話が続かない傾向があります。話しかける話題も数値に裏付けられた論文のデータや製品情報といった話題を選びがちかもしれませんが、黄タイプは細かい部分をあまり気にしないので、聞いているようで響いていないということが多いです。

逆に、黄タイプの医師は自分の趣味や最近流行っているものなど、楽しいという感情に結びつく話題を好むので、まずは医師の好きなものを知るということから始めてみるといいでしょう。

また、黄タイプは「オシャレ」で「最先端」のものに興味を持っているため、あえて見た目や流行を重視した営業ツールを持っておくというのもアプローチ方法のひとつです。ノートパソコンやタブレット等も機能性だけでなく、デザイン性も考慮して話題になるようなものを利用するとよいでしょう。

MR:黄タイプ 医師:緑タイプ

緑と黄タイプは隣合う色なので、比較的もともとの相性がよい関係性です。逆に、緑タイプは誰とでも仲良くなれるので、どのメーカーのMRとも万遍なく付き合っていて差別化できないというケースもあるはず。そんな時こそ、インサイツカラーを参考にしたアプローチをすれば、もともとの医師との関係性をより強固なものにすると共に、他社と一歩差をつけることができます。

例えば、調和を乱すことが苦手で断れない緑タイプは、心の中でストレスを抱えていることも少なくありません。しかし、あまり自分の感情を全面に出すことは得意ではないので、疲れている時は黄タイプのノリを重視したトークに付いていけないことも。こうした面会が重なっていくと、表面上は話を聞いてくれていても信頼関係が崩れていくことにも繋がりかねないため、緑タイプの医師と話すときは、いつもと違う表情や反応がないか特に注意しましょう。

もし、疲れている時や急いでいる時に話しかけてしまったという場合は、後日謝罪の言葉を一言添えると、自分からは苦情をいうのが苦手な緑タイプにとっては『ちゃんと分かってくれている』という安心感に繋がってMRへの信頼度が高まるのでおすすめです。

まとめ

たとえ自分と合わないタイプの顧客であっても、成果を得るためにアプローチをしないといけないというのは、営業として最も頭を抱える問題です。性格というのはなかなか変えられないものですし、誰からも好かれるMRになるというのは現実的ではないでしょう。

しかし、インサイツカラー診断を使って自分と相手の違いを客観的に理解し、考え方や行動を相手に合わせて変えることで、少なくとも今よりもよい関係性を築くことができるかもしれません。

何より、『自分のために努力してくれている』というのは、少なからず相手となる医師に伝わるはずです。苦手なタイプの医師ともよりよい関係を築いていくためにも、効果的な営業アプローチツールとしてインサイツカラー診断を活用してみてはいかがでしょうか。

※参考記事
「営業機会を最大限に活かす 成功するためのMR営業のコツ」

Facebookでシェア
Twitterでシェア