鍵盤の感触が素晴らしい!それが、カシオのプリヴィアPX-5Sを初めて弾いたときの第一印象です。今から15年ほど前の音大時代、友人のデジタルピアノを弾いたことがありましたが、その時は鍵盤の軽すぎるタッチが子供の頃からクラシック畑で指を鍛えてきた自分には物足りないものでした。クラシックにおけるピアノ演奏の特色は、タッチの強弱や速度を微妙に変えることで、同じ1音から多様な音色を紡ぎ出すというもの。しかし、以前のデジタルピアノの鍵盤は軽すぎて指のコントロールがままならず、音色の変化を付けることが難しかったのです。その点、PX-5Sの鍵盤はハードタッチで、クラシックのピアニスト特有の“指で音を創る”という演奏手法にしっかり対応。演奏者の繊細なタッチに応え、イメージする音を奏でてくれます。
音質に関しては申し分ありませんね。アコースティックピアノの場合、高音はいいけれども低音が物足りないなど、音質にムラがあることもあります。しかし、PX-5Sは高い音から低い音まで、すべてが完璧。いい意味で硬質かつクリアな音は、まるでヴィンテージピアノのような味わいがあり、とても気に入っています。
そしてもうひとつ、PX-5Sの特色で忘れてはならないのが、そのコンパクトなサイズ感です。手軽に持ち運べるため、クラシックをどこででも演奏できるようになったことは、私にとってとても大きなメリットになりました。というのも、ピアニストの場合、楽器が大きすぎて運搬が大変なため、ピアノのある場所でしか弾くことができないという制約が常にあったのです。先日も東京湾の遊覧船内でクラシックを弾いたのですが、こんなことができるようになったのはPX-5Sに出会えたからこそ。私自身の演奏活動の幅を広げてくれたように、PX-5Sはクラシックというジャンル自体にも新たな可能性をもたらすポテンシャルを秘めた一台だと感じています。
加畑 嶺 プロフィール加畑 嶺(かばた れい)
リストの再来と言われた巨匠、故ラザール・ベルマン氏に認められ、若くしてイタリア、ロシア、オランダで学びながら活動。帰国後は正統派クラシックにとどまらず、タンゴ・ジャズ・ユニット「ジャクロタングス」のメンバーとしても活躍。2013年には、ジャクロタングスと歌手、庄野真代とのコラボレーション・アルバム「CIN EMATIQUE~シネマティーク~」をリリース。その精緻かつ大胆な表現、核心を衝く解釈により、クラシックのみならず幅広いジャンルでも活動の場を広げている。
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