軽減税率に対応する経理方式として知っておきたいのがインボイス方式。そこでこのコラムではまだ耳慣れないインボイス方式を少し解説しておきたいと思います。
インボイス方式を理解していくために一旦軽減税率がない状態で経理方式をおさらいしてみましょう。
たとえば3,000円の辞書があります。それを買うには消費税10%を含めた3,300円を書店に支払います。
それでは書店は消費者から預かった消費税300円を納税するのかというとそうではありません。それはその本を仕入れるときには本の問屋に同じく消費税10%をを支払っているからです。そのため書店は仕入れで払った消費税を差し引いた価格を納税すれば良いことになり、仕入れ控除が発生します。
しかし軽減税率導入後は品目によって税率が異なるため、この仕入れ控除にも細かい書き込みが必要になってきます。そこで導入されるのがインボイス方式、これは軽減税率導入以降で必要になる仕入れ控除のための新しい経理方式です。
前述の辞書のように軽減税率の導入前は、納税控除は消費税額が一律のため簡単にできました。ところが導入後は品目によって税率が違ってくるため、不正や記載ミスが発生する恐れがあります。これらを防ぐために用いられるのがインボイス方式で軽減税率が実施されているEU諸国では既に採用されています。
インボイス方式は、製品ごとに細かい事柄が記載された納品書又は請求書と思ってもらえばいいでしょう。ではどんな細かい事柄が記載されているのでしょうか。それは数量・単価・税率・税額・合計金額・適用税率の他、課税事業者に割り振られる登録番号などです。
このことで一つひとつの取引内容が明確になり不正がしにくくなります。
例えば販売時は消費税8%で売っておいて、仕入れは10%扱いにすることで、納税額を少なくしてごまかすといった不正はできないでしょう。また登録番号によって税額の確認や販売者の確認を追跡調査することも容易になってきますので課税事業者でもないのに消費税を請求することは難しくなります。
ではそういったことが面倒だからインボイス方式を無視すればいいかと言えば、仕入側の事業者はインボイスに基づかない金額で仕入税額控除が認められなくなるので、必ず卸側にこれを求めることになります。
税を徴収する側にとってメリットとなるインボイス方式ですが、納める側にとっては作業が複雑になり、そこに新たな時間とコストが発生することが予想されます。
しかし、まだ時間があります。それはインボイス方式に変わるまでの時間です。このインボイス方式が実施されるのは、軽減税率を導入してから4年後。
こういった時間をどう準備や対応に使っていくか。軽減税率導入に伴い、これらの準備も非常に大切になります。
2016年6月