都心のオフィス街では「ランチ難民」と呼ばれる、「お昼ご飯を食べたくてもどの飲食店も混んでいるため、入店できない人たち」が日々焦りながら飲食店巡りをしています。オフィスが入っているタワービルから1階のエントランスに降りるにも、エレベータが混みすぎているため10分もかかり、お店にたどり着いても行列でどこにも入れず、結局コンビニでお弁当やお惣菜を買って、近所の公園で膝の上に乗せながら急いで食べるビジネスマンが増えているのです。
飲食店としては、「ピークタイムにばかり重なって来店するのではなく、アイドルタイムにずらして来店してくれれば助かるのにな~」と嘆きたいところですが、軽減税率導入により、この「公園でお弁当を食べるランチ難民」は増えると予想されています。消費税率が外食ならば10%、テイクアウトならば8%となりますからね。少ないお小遣いでやりくりしているお父さんたちの多くは、外食派から公園派となるでしょう。
つまり、軽減税率導入は飲食店にとっては向かい風以外の何物でもなく、逆に惣菜屋やテイクアウト業態にとっては、強い追い風となるのです。数年前から、社員食堂を持たない企業向けに冷凍惣菜を「富山の置き薬形式」で販売する業態が伸びていますが、これも軽減税率導入を追い風に、さらに伸びる業態と目されています。
一般的に「中食(なかしょく)」と言えば、個人が食べ物をテイクアウトして自宅に戻って食べるシーンを想像しがちですが、軽減税率導入を機に、オフィス街では、テイクアウトをして公園や会社の会議室で食べるという中食が増えることが想像されます。元々テイクアウト商品を販売している業態は、「いかに効率的にお客様に「持ち帰ってもらうか」、またこれまでテイクアウトをしていなかった業態は、「いかに売上高持ち帰り比率を高めるか」を研究していかねばなりません。
実はこの2つは「宅配」をすることで解決できます。いえ、会社に配達をするので「社配」ですね。テイクアウト業態でも外食業態でも、毎日のオーダーを1社1社の取りまとめ役にまとめてもらい、一気に受けておきます。「今日はA社には焼き鳥弁当を50個、B社には海鮮ビビンバを30個」などのように、会社ごとに数十個単位でお弁当を届けることが出来れば、人件費を使っても十分にペイします。 1人1人からのオーダーに対応して個別社配をしていてはとても割に合いませんが、「毎日まとめてオーダーをしてもらう」ことができれば、中食業態でも、外食業態でも、売上を大きく伸ばせる可能性が高くなります。
最近では「各飲食店や宅配業者からお弁当を買い取り、それを大企業の会議室で「即席お弁当屋」のように社員に対して販売する」という業態も非常に伸びています。企業は社員のランチ難民化を防いで時間を有効活用させてあげられる。各店舗は自店の売上を伸ばせる。それを仲介する企業もマージンが得られる、と三方よしの状態を作れていることが勝因ですね。
店舗側としても、軽減税率導入時期は企業に対して営業を仕掛けるチャンスです。「社員食堂を持たない御社にとって、社員のランチタイムを充実かつ効率化するために、お弁当の社配を導入されませんか? 毎日ご希望のお弁当を御社まで社配させていただきます。ただし、個数を把握するためにもとりまとめは総務部で行っていただければ幸いです」などのように営業をかけてみるのです。
特にIT系企業では現在「超売り手市場」と言われ、優秀なITエンジニアを企業が採用したくてもできない状況にあります。「御社が応募者を募る際に多くの福利厚生を謳っていらっしゃると思いますが、その中に「社配」があれば、アクティブに動くことを嫌う傾向にあるITエンジニアに対してもアピールになりますよ」などのトークと共に営業をすれば、聞く耳をもってくれる企業は多いと想像されます。
「お弁当の社配」先を開拓することは簡単なことではありませんが、1社開拓できれば、継続的にかなり多くの売上を確保できることになるでしょう。軽減税率導入を待たずしても、ぜひ開拓をトライしてみてください。
2016年6月