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中食業態は着実に市場を伸ばしている

外食産業はピーク時よりも4.7兆円市場規模が縮小

農林水産省の外郭団体である公益財団法人食の安全・安心財団が2015年に発表したデータによると、外食産業は1997年の約29兆円をピーク に、年々縮小傾向にあります。2011年に22.8兆円で底を打った後盛り返してきたとは言え、2014年度でもまだ24.3兆円まで落ち込んでいますの で、ピーク時よりも4. 7兆円もシュリンク(縮小)してしまっていることとなります。

そんな中、「中食(なかしょく)と呼ばれる業態は着実に市場を伸ばしています。農水省データでは「料理品小売業」と定義されますが、惣菜屋、折詰小売業、駅弁売店、調理パン小売業など、一言で言えば「テイクアウト」業態が伸びているということになります。外食がピークだった1997年時には約4.3兆円でしたが、2014年度には約6.8兆円と、1.5倍規模まで伸びています。軽減税率導入により、この中食の市場規模は更に伸びると予想されています。

日本では、少子高齢・核家族化が進むと同時に、「思考の西洋化」が進んでいると言われています。具体的には、「料理はお母さんが毎日自宅で作るもの。家族で食卓を囲み、全員一緒に食事を摂るもの」という固定概念が崩れ、「料理はテイクアウトでも宅配でも構わない。家族が全員揃うことは稀で、1人ずつで食事を摂ることが当然」という考え方になってきたということです。

お1人様業態も売上を落とす可能性大

ここ数年、いわゆる「お1人様」を狙った新しい外食業態が話題になりました。ラーメンや牛丼のみならず、「1人焼肉」「1人鍋」など、従来は「大人数でワイワイ言いながら楽しむ食事」の代表格だった焼肉や鍋料理を「1人で食べに飲食店に来るお客様」が非常に増えたのです。飲食店側としては、「1人用」に席を区切ったり、コンロを用意したりするなどの設備投資が若干必要となるとは言え、
・ 客単価は複数人数で来るお客様と同等
・ グループで来店されるお客様はお通しできるテーブルが空いていないとご案内ができないが、「お1人様」ならば、その心配がない
・ 何よりも話す相手がいないためお客様は黙々と食事をとられ、サッと帰っていただけるため、店舗滞在時間が短く、席回転効率が良い
などのメリットが多数あるのです。若者が多く集まる街では「お1人様仕様」に店舗を改装された飲食店も多いでしょう。

ただ、残念ながらこのような「お1人様」を狙った業態も、軽減税率導入により、売上を落としてしまう可能性が高いと言えます。外食は10%の消費税、テイクアウトなどの中食は8%の消費税となるからです。仮に2,500円の焼肉を食べた場合、消費税が10%の場合は250円、8%の場合は200円を「食事代」とは別に支払う必要があります。たったの50円と思うかもしれませんが、消費者はこの微妙な金額差に敏感です。

大手牛丼チェーン店各社は、生き残りのために牛丼1杯の価格を10円単位で改訂していますが、たった数十円、他社よりも高くなっただけで客数が30%も減ってしまう、ということなども起きています。

外食業態の中食対応が必須

このように、軽減税率の導入により、お客様は「10%の消費税を払ってでも飲食店で食べて帰るか」「8%の消費税で持ち帰って安く済ませるか」を悩むことになるでしょう。この消費者心理と行動を、「外食産業VS中食産業」と捉えるのではなく、「外食業態の自店が中食ニーズを満たすためにはどうしたら良いのか」を、軽減税率導入までにしっかりと準備し、対応することをおすすめします。

「店舗でご提供している全ての料理をお持ち帰りいただけます」「当店のお持ち帰りパックは特殊な保温性があるため、ご自宅でも店舗同様おいしく召し上がっていただけます」など、「中食業態にお客様を獲られないようにする」ための工夫が必要となりますね。

2016年6月

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