軽減税率導入により、10%の消費税が適用される飲食店の苦戦が予想されています。牛丼店の価格競争を見ても明らかなように、消費者はたったの数十円の違いでも、価格の安い店に流れていってしまう傾向にあります。同じハンバーグランチを食べるのならば、お店で10%の消費税を払うよりも、持ち帰りを弁当屋で買って8%の消費税を払ったほうが安く済む、と考えられてしまう、ということですね。
では、軽減税率導入後は、飲食店として、テイクアウト業態に勝てる可能性は無いのでしょうか?実は、そんなことはありません。以下3つのポイントを抑えれば、十分にテイクアウト業態に勝てる可能性が高いと言えます。
1.テイクアウト比率を高める
保健所への届け出や食中毒などには十分すぎるほどの注意が必要ですが、飲食店にとって「持ち帰り(テイクアウト)をしてもらう」ということは、売上を伸ばす上で非常に重要な戦略です。特に毎日、ランチタイムのみ満席で、それ以外の時間帯は売上が芳しくない、という店舗にとっては、「店舗の席数=売上のキャパ」となってしまっているはずです。
30席ある飲食店で、ランチタイムに2回転したとしても60食分しか売上が立ちません。でも、持ち帰りをしてもらえば、席数は関係なくなり、理論上は青天井で売上を伸ばすことが可能となるのです。お客様としても、軽減税率導入により、店舗で食べれば10%の消費税を払わなければならないものが、持ち帰るだけで2%割引になる、ということで喜んで持ち帰ってくださります。
もちろん、お弁当を大量に作っても売れ残ってしまっては元も子もありません。近隣のオフィスビルにはどんな企業が入っているか、そこに勤めている人はどんな方々なのか、などの調査をして、「売れやすいお弁当」の傾向をつかむようにしてください。大型の工事現場が近くにある場合には、塩分が濃く、量も多い揚げ物中心のガッツリ弁当を増やしましょう。逆に大型コールセンターが近くにある店舗でしたら、女性が好む、低カロリーでヘルシーなお弁当を用意しておけば、売上は伸ばせるはずです。自店の売上高は席数によって上限が決まる、のではなく、売上高に占めるテイクアウト比率を高めることが、軽減税率導入を飲食店が乗り越える1つめのポイントです。
2.アイドルタイムに来店してくださったお客様にはささやかな特典をつける
外食ですから、お客様は10%の消費税を支払う義務があります。でも、テイクアウトだったら8%で済むのに・・・と悩む方も多いでしょう。そこで、アイドルタイム(お客様が少なくなる時間帯)にご来店いただいたお客様には「ささやかなサービスをプレゼントします」とアピールをしてみてはいかがでしょうか?
例えば、「アイドルタイムは食後のコーヒーが無料」「ハンバーグのトッピングを無料」など、売価で100円~150円程度のサービスをつけるようにしてみてください。
お客様にとっては100円が浮くので、消費税分を気にしてテイクアウト商品を買って会社で食べるよりも「お得感」が出ますし、店舗にとっても、原価20~30円程度でお客様の数が増えるので万々歳です。また、アイドルタイムになってもいつもお客様が入っているお店というのは、店前通行している人からすると「美味しいに違いない」と思っていただきやすくなりますので、さらに新規客を呼び込む効果も期待できます。お客様に、「あの店は混んでいる時間帯を外せば少しだけ安くしてくれるから、行ってみるか」と記憶してもらえるように、ビジータイムの会計時には常に「アイドルタイムはお得」と書いてあるPOPをご案内するようにしてください。
3.来店すればするほどお得なクーポンを発行する
逆説的な言い方になりますが、お客様は大好きなお店ならば、たとえ2%消費税が高くなろうとも、自分の好きな飲食店に通いたいと思われるはずです。当然、飲食店側も、そういったお客様を囲い込んでいくことが必要です。お客様の囲い込みのためには、「その店に通えば通うほど得をするクーポン」を発行することをお勧めします。
例えば持ち帰りが難しいラーメン屋でも、来店して食事をしていただくごとにスタンプを1ポイント、10ポイントで半チャーハンプレゼント、20ポイントでお好きなラーメン1杯プレゼント、とすれば、お客様はせっせと通ってくださいます。仮に客単価800円の店の場合、10回来店していただいたら8,000円の売上をそのお客様からいただくこととなります。半チャーハンの原価が仮に全部で100円かかったとしても、そのクーポンがあることで8,000円の売上が確保出来るとなれば、やる価値はありますよね。
いかがでしょうか?軽減税率導入は飲食店にとって負け戦への入口ではありません。勝つためのポイントをしっかりと抑えさえすれば、きっとテイクアウト専門店にも勝っていけるはずです。
2016年6月