軽減税率というキーワードで検索するとよく目にするのが「反対」または「賛成」の意見です。その中でも「軽減税率の恩恵」が不平等か否かに関連したものが目立ちます。ここではその議論のポイントについてまとめてみました。
軽減税率の対象として大きなウエイトを占めるのは生鮮も加工も含めた食品。そして食品はただ空腹を満たすものではなく、好き嫌いといった嗜好がどうしても注がれやすいもの。あくまで個人的な好みもありますが、どちらかといえばお金を高く支払ったほうがそういった趣味や嗜好を反映しやすい傾向にあるようです。
たとえば日本人の主食であるお米も産地や銘柄にこだわったほうが当然高くなります。牛肉も味にこだわればお値段はかなり上がります。そしてそういった高額な食品を購入できるのはやはり収入が高い人になってきます。
不平等の主張が生まれるのは、高額な食品もそうでないものも軽減税率の対象となっているから。つまり本来なら10%払う税金が8%になることで高額品も普通の食材も2%分、負担額が少なくなっています。これは金額が高くなればなるほど恩恵が大きくなることになります。毎月10万円を食費に費やせる高額所得者と3万円しか出せない世帯の2%という恩恵を比べればそれは明白でしょう。本来、所得の低い世帯の救済策として打ち出された軽減税率なのに年収が高い世帯の方がより多く恩恵を受ける。だから軽減税率はけしからん。それが不平等を唱える人の主張となっています。
ではそういった「恩恵の不平等」に異を唱える人の意見はどんなものでしょうか。その一つをわかりやすく伝えるために平均的な収入である主婦のお買い物を例にしてみましょう。
その主婦は新聞に折り込まれたスーパーのチラシをよく見ます。そして目を凝らしてすべてのチラシを比べ、キャンペーンなどで1円でも安い商品を探します。ときには何軒がスーパーをハシゴしてまで出費を安く抑えようと自転車を走らせることもあります。そして軽減税率は、少し乱暴な言い方をすれば国をあげて実施する期間無 しの「全食品2%オフ」キャンペーンとなってきます。「これを喜ばない人はいない」というのが不平等論に異を唱える人のポイントとなっています。
全人口の中では高額所得者よりそうでない人の割合が明らかに大きくなります。つまり一部の人たちの恩恵の不平等を無くすために軽減税率をなしにすれば多くの人たちの「少しでも安く」の願いが叶えられなくなるというのが主張のポイントです。
どちらが正しいか、もちろんその結論をこのコラムで出すのが目的ではありません。ただこの議論を比べてみると不平等を唱える人は、「平等であるべき」という理念的な面を重要視し、それに反対する側は、「生活での実感」を大切にしているように捉えることもできそうです。果たしてこの議論、どのように決着していくのでしょうか。
2016年8月