軽減税率は税を納める痛み=痛税感を緩和させる役割があるとされています。しかし、この痛税感は単に「税率」の高さで大きくなるというものではなく、実際、日本よりも税率が高いにも関わらず、税を負担に感じる国民が少ない国もあるそうです。このコラムではそんな痛税感にスポットを当て、そこからビジネスに活かせるヒントを探ってみました。
世界の消費税をザッと見てみると1位はハンガリーで27%、スウェーデンは25%で6位、10位はアイルランド、その後には21.2%のフランスが控えています。
このフランス、日本が10%に増税したとしてもその税率は倍以上。さぞかし痛税感も大きいと思いきや、19.6%から21.2%へ引き上げられたときにほとんど反対の声が上がらなかったそうです。フランスの国民性は決めたことに無条件で従う従順なものではないことは、かつてのフランス革命やナポレオンの活躍といった歴史が証明しています。そんな国が消費税の増税時に大騒ぎしなかったのはどういう理由があるの でしょうか。
またある国際比較団体が行った痛税感の調査では、日本よりはるかに消費税の税率が高いスウェーデンが痛税感のランクでは日本より下との報告があります。
ではなぜフランスやスウェーデンは税金に対する負担意識が少ないのでしょうか。それを識者に問えば即、口を揃えて「社会保障が充実しているから」との答えが返ってくるでしょう。
まずフランスでは子ども手当が充実。子どもが2人、3人と増えるほど手当が厚くなります。また新学期には学用品など負担を軽減するために新学期手当が支給されるそうです。一方ノルウェイは学費が大学、さらには大学院まで一切無料。医療や老後の生活も社会保障でしっかり守られているため、日本のように万が一の病気や老後に備えてお金を貯めておく必要がないと言われています。だからと言って我が国の肩を持つわけではありませんが、けっして日本は税金を無駄に使っている訳ではありません。ただどちらかと言うと道路などの公共事業といったハード面に利用されている印象が強く、一般生活では税を納めた成果がなかなか実感できないのが現実です。そしてその逆が社会保障の充実しているフランスや北欧の国。そういった国々では「税を納めて安心の生活を買っている」という感覚があり、たとえ税金を払ってもしっかり満足が得られることで痛税感は緩和されているようです。
こういった痛税感の捉え方、ビジネスに応用することはできないでしょうか。たとえば外食。軽減税率の対象外である外食は、消費税10%になったその日からお客様は余計にお金を払わなければいけなくなります。いわば増税のその日から痛税感が急速にアップすることになります。
ではそれを和らげるにはどうすればいいでしょうか。そのヒントが前述の国にあります。単純に言えば今までよりも余計にお金を払ってもそこに満足が得られれば、「2%の増税くらいなんともない」とお客の痛みは緩和されるはずです。
その昔、某ハンバーガーチェーンが「スマイルは0円です」とキャンペーンしていましたが、増税時こそ、お客様が離れていってしまう可能性が高い外食店は、笑顔や接客サービスの強化に注力をすべき時かもしれません。
消費税増税、軽減税率実施までに、自店利用客の満足度を高めるためには、どのような工夫をしたら良いのか、しっかりと見つめ直し、軌道修正するチャンスをもらったとポジティブにとらえ、しっかりと準備をなさってください。
2016年6月